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「Handepは、関わるすべての人たちを笑顔にするブランドだと思います」 ― Earth Company代表理事・濱川明日香さん×Love&sense高津玉枝対談

フェアトレードのセレクトショップLove&senseに、インドネシアのエシカルブランド『Handep』が新しく仲間入りしました。インドネシア・ダヤク族が伝統技術を活かして製作するかごバッグを中心とするブランドで、日本で販売するのは私たちが初めてです。

Love&senseとHandepをつないでくださったのは、アジア太平洋地域のチェンジメーカー支援を行う一般社団法人Earth Company代表理事・濱川明日香さんです。
そこで今回は、Love&sense代表・高津玉枝との対談を企画しました。Handepはどういった背景を持つブランドなのか、なぜ日本での販売パートナーに私たちを選んでくださったのか、お話を伺います。

インドネシアのサスティナブルブランド

Handep

インドネシアの社会活動家ランディがCEOを務めるブランド。バッグをはじめとする製品は、インドネシア・ボルネオ島(カリマンタン島)中部に住むダヤク族が、伝統的な製法で1つひとつ手づくりしています。Handepは確かなクオリティと上品で大人かわいいデザインから多くの人の支持を集め、インドネシアを代表するエシカルブランドに成長しつつあります。つくり手である村の小規模農家や職人、女性に新たな仕事を創出することで、社会的・経済的な自立を支援しています。

未来をつくる行動・選択をする人は、みんな「チェンジメーカー」です

高津:濱川さんは、Newsweek誌の「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれるなど国境を超えて活躍されていますが、普段はどのような活動をなさっているのですか。

濱川:2014年にバリ島でEarth Companyを立ち上げました。「次世代につなぐ未来の創出」をミッションに掲げ、チェンジメーカーの支援や育成を行っています。また、バリ島ウブドでエシカルホテルも運営しています。

高津:チェンジメーカーとは、どういう人たちのことを言うのでしょうか。

濱川:チェンジメーカーは名前の通り、社会に変化や変革を生み出す人たちのことを指します。たとえば社会起業家やNPOの代表の方々ですね。広い意味では、社会人や学生、主婦の方でも、普段、世界のことを考えてエシカルな意思決定を行っていれば、チェンジメーカーだと捉えています。

Earth Companyでは、多くのチェンジメーカーの中から、年に1名を「インパクトヒーロー」として選出し、支援を行っています。Handepと出会ったのもインパクトヒーロー事業がきっかけでした。

HandepのCEOは辛い歴史を持つ先住民族の出身。だからこそ、周りの人たちに最大限の配慮ができる

高津:事業の一環でHandepと出会ったのですね。もう少し教えていただけますか。

濱川:HandepのCEOを務めるランディが、2021年のインパクトヒーローに応募してくれたんです。彼はバリ島でとても多くの人から尊敬されている社会活動家で、その年の「準インパクトヒーロー」に選ばせていただきました。

ランディはダヤク族という、まさに森林伐採の被害を受けているカリマンタンの先住民の出身です。
そこからとても努力して、現在いろいろな人を巻き込みながら、チェンジメーカーとして活躍しています。Zero to Hero (ゼロ・トゥ・ヒーロー)、つまりゼロからヒーローになった人という表現がとても良く合う方ですね。

高津:インドネシアの先住民の方々は虐げられている環境にあると聞きます。日本にいると想像が難しい部分ですが、実際はどうなのでしょうか。

濱川:「迫害」という言葉が当てはまるかはわからないですが、先住民族の人たちには教育や就職の「機会」が届きにくいんですよね。インドネシアには何万もの島があって、それぞれみんな自分たちの言葉や文化、伝統を守って暮らしています。そうした先住民の人たちが住む地域では、質の高い教育を受けることが難しいんです。だから良い職にも就けなくて、良い生活、境遇を得られない。貧困のネガティブサイクルから抜け出せない人たちが多い、というのが現実かと思います。

高津:以前、貧困の定義の1つは「人生で選択ができないこと」だと聞きました。学びや仕事の機会を得られなければ、人生において選択肢がなく、自分が望む人生を生きられませんよね。

濱川:本当にそうですね。また、「虐げられている」という意味では、カリマンタンの場合、多くの地域でパーム油の開発のために森林が伐採されたり、先住民族が立ち退きを強いられたり、という問題が古くからあります。カリマンタンはその意味で、とても特異な地域・ケースだと思います。

高津:先住民族の人たちは、土地を所有する概念をあまり持たないので、政府の開発によって二束三文で土地を奪われてしまうなどの問題もあるようですね。

濱川:カリマンタンの先住民族が持つ土地の概念は、たとえば自分は「森の人間」なんだという感覚の人たちが多くて、「ここからここまでの敷地の人間」という考え方は希薄なんです。こうした考えに付け込んだ土地のトラブルは頻繁に聞きますし、バリ島でも同様です。

パーム油に関しては、産業レベルの問題になっています。先住民の人たちもそこで働いていたり、そのシステムの中で生きていたりするので、そう簡単に解決できるものでも、抜け出せるものでもないというか……。カリマンタンにあるランディのコミュニティでも、立ち退きを拒否し、逮捕された人たちが多く出ました。ランディの家族も立ち退き命令や政府に対して声を上げて、逮捕や拘束、迫害を受けたそうです。

彼は子供の頃からこうした現実を目の前で見てきて、自分たちで解決しなければ、と社会活動を志したんです。ランディはその後、奨学金を得てオーストラリアの大学で学び、世界や資本主義のシステムを目の当たりにしてカリマンタンに戻って来ました。

 民族の伝統工芸に、世界レベルのクオリティとつくり手のストーリーをプラス

高津:小さな島から世界に飛び出して、多くのことを学ばれたのですね。Handepではダヤク族の伝統を活かしたバッグなどを製作・販売して地域に働く機会を提供していますが、未来を見据えて持続可能な仕事をデザインしている点がすばらしいと思いました。

たとえば製品の素材に、採り尽くして枯渇してしまうものではなく、地元の森林などに自生するラタン(藤)を使用していますよね。売れる商品の傾向などを考える前に、サステナビリティを最優先していることに感心しました。

Handepでは、1日かけて川をさかのぼってラタンを採りに行き、村に昔から伝わる染色方法を用いて職人の手で製作しています

濱川:Handepの商品は、ダヤク族の伝統的な模様や編み方を用いて製作していて、デザインがすごく素敵なんですよね。世界を見てきたランディがプロデュースしているからこそ、海外で通用する高いクオリティとファッション性を確保できているのだと思います。

高津:それにラタンを素材とするバッグは、すごくしなやかで柔らかくて、軽いですね。デザインもカジュアルになりすぎずシンプルな柄で、大人が持っても上品です。造りもすごく丁寧ですし。それからタグに製作者1人ひとりの写真が入っていて、つくった人をとても身近に感じられますよね。

濱川:本当にそう思います。私も初めてHandepのカゴを手にしたときに、「このカゴをつくったら私の子供を学校に通わせることができるんです」と書いてあるのを見て、買わないという選択肢はないな、と即購入しちゃいました。こういう、ちょっとした工夫を見ても本当に良く考えられているな、と思います。

高津:Handepはソーシャル企業として、どのような取り組みを行っていますか。

濱川:まず、ダヤク族のコミュニティに仕事の機会を提供することで、小規模農家や女性・職人さんが社会的、経済的に自立できるよう支援しています。チェンジメーカーの育成にも力を入れていますね。教え子の中にはランディに憧れて、いつか彼のようになりたいと思いながら学んでいる子もいるようです。

サステナブルやエシカルへのこだわりも非常に強いです。製品の製作・販売以外にも、森林保護活動や地域の伝統文化の継承に取り組んでいます。

私たちは、日々の選択によって地球を救える最後の世代

高津:ところで濱川さんはHandepをLove&senseに紹介してくださいましたが、なぜ私たちを選ばれたのでしょう。

濱川:理由の1つは、Love&senseさんがショッピングという行動に働きかける形で支援を行っていることです。私たちにとって買い物はとても身近なことですし、自分が支払ったお金が誰に届いて、どんなインパクトにつながっているのか知ることができる。それって、ものすごくうれしい体験だと思うんです。

2つ目の理由は、エシカル消費に対するLove&senseさんのスタンスです。エシカル消費という行動自体はすばらしいのですが、「社会に良いから購入してね」というアプローチを過去に多く目にしてきました。
この数年はだいぶ減っているようですが、これからはそうしたスタンスでは通用しないと思います。

「世界に良いから買う」というモチベーションではなく、かわいいから、着心地がいいから買う、というように、「したいからする」という気持ちを活用して広めていくところに、フェアトレードの意義があると感じています。こういう考え方をLove&senseさんとは共有できると思ったんです。

高津:まさに私たちも「かわいそうだから買ってね」というスタンスではなく、「自分が欲しい」と思ってもらうために、どのように届けていけば良いかをいつも考えています。

先ほど「選択」についてお話が出ましたが、私たちは毎日、何かを選びながら生きていますよね。どういうチョイスをするかによって、社会に大きな影響を与えています。だからLove&senseは、皆さんが選択できるよう、商品や場所を丁寧に提供し続けるつもりです。

濱川:2015年のCOP21で、オバマ大統領が科学者の言葉を引用して「私たちは気候変動の影響を体験する最初の世代であると同時に、それについて何かができる最後の世代だ」と演説を行い話題となりましたが、私もとても感銘を受けました。
気候変動に限らず、いま世界はさまざまな課題を抱えていますよね。私たちは、日々の選択によって地球を救える最後の世代だと思っています。

高津:私たちにできることは限られているかもしれませんが、まず何が起きているのかを知ることや、自分が気に入ったものが見つかったらエシカルな消費を行うことなど、小さな行動を続けていくことが大事なのでしょうね。濱川さん、最後に何かメッセージがありましたらお願いします。

濱川:Earth Companyを始めて7〜8年経つのですが、私たちが支援するチェンジメーカーの商品が日本で販売されるのは初めてで、本当にうれしい気持ちでいっぱいです。

ましてやそれがHandepであることに、感極まってしまって。Handepは、こんなに安心できるブランドをほかに知らないぐらい、さまざまな意味ですばらしい団体です。これからインドネシアを代表するエシカルブランドになっていくでしょう。ぜひたくさんの方に手に取ってもらいたいです。

高津:今回、濱川さんのご紹介でHandepがLove&senseの新しいパートナーに加わりました。日本デビューという貴重な機会をいただきましたので、皆さんにしっかりと魅力を伝えていきたいと思います。日本中のいろいろな場所で、Handepの商品を持っている人が増えたらうれしいですね。

Love&senseのオンラインショップでも商品を購入できますので、皆さん良かったらのぞいてみてください。濱川さん、楽しい時間をありがとうございました。

HANDEPのご案内

HANDEP商品は以下オンラインショップよりご購入いただけます。

商品はこちら

Earth Companyさんのご案内

一般社団法人Earth Company
Earth Companyは、以下3つの事業を通して、「リジェネラティブなあり方」を追求しています。

  • リジェネラティブな未来を創る類稀な変革力を持つアジア太平洋のチェンジメーカーを支援(インパクトヒーロー支援事業)
  • リジェネラティブな未来をつくる人を育成する研修プログラム(インパクトアカデミー事業)
  • リジェネラティブなあり方を具現化したエシカルホテル運営(エシカルホテル事業)

HP:https://www.earthcompany.info/ja/
Instagram:https://www.instagram.com/earthcompany.jp/

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(文・透谷凛/編集・飛田恵美子


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